プロジェクト
中:南日本酪農協同株式会社 企画管理 課長 石川年樹さま
左:電通九州 宮崎支社 谷口優太
右:電通九州 クリエイティブ・ディレクター 湯治健富
◆ 課題 | 「ヨーグルッペ」発売35周年を記念し、九州以外での認知拡大を図りたい |
---|---|
◆ 施策 | 商品の“愛され方”を踏まえて、オリジナルゲーム企画キャンペーンを展開 |
◆ 効果 | SNSやメディアで話題になり、応募総数36万通以上。売上も前年比超え |
2020年に発売35周年を迎えた、南日本酪農協同株式会社のロングセラー商品「ヨーグルッペ」。九州人にはすっかりおなじみですが、本州ではあまり知られていないこの乳酸菌飲料(殺菌)を、どんな企画でプロモーションするか。電通九州のクリエイティブチームが提案したのは、意外にもオリジナルゲームの企画でした。第一弾が好評で、2022年にはさらに拡張した第二弾も発表。宮崎全域を巻き込み、ネットでも話題が絶えないキャンペーンがどのように生まれたのか、担当者に語っていただきました。
ヨーグルッペ特有の愛され方とは?
昭和35年に、酪農協同組合の設備を引き継いで設立された南日本酪農協同株式会社。主力の牛乳や乳製品はもちろん、「スコール」など全国に知名度のある商品もさまざま展開している、宮崎を代表する企業です。着実な商品づくりでロングセラーが多く、ヨーグルッペは2020年で発売35周年。日頃のご愛飲に感謝して、キャンペーンを展開することになりました。
石川さま
「ヨーグルッペは、宮崎や鹿児島など南九州での認知度は高く、箱で買ってくれるお客様も多いのですが、一旦九州から出てしまうと認知度は大きく下がります。今回のキャンペーンはまず、九州以外での認知を上げることが目標でした」
南日本酪農協同株式会社 企画管理 課長 石川年樹さま
2020年以前のキャンペーンでは、店頭を派手に作ることに主眼が置かれていました。限られた売場面積を最大限に使い、ポップを用意したり売り子さんをつけたりと、「キャンペーンしてます!」と誰の目にもわかることが重要でした。しかし、コロナ禍によってその状況は一変します。
「コロナによって店頭での展開も難しいとなった時、どんなキャンペーンができるのか、我々だけの経験や知恵では足りないと感じました。そこで、以前よりお付き合いのあった電通九州さんに、企画提案をお願いしたのです」
お題を受けたクリエイティブ・ディレクターの湯治は、今の時代にどのようなキャンペーンが拡散しやすいかを考えていきました。
湯治
「誰に届ければ、一番効率よくキャンペーンが拡散していくか。そのヒントを得るためにリサーチを始めると、SNS上で『おはヨーグルッペ!』とか『ヨーグルッペ、飲むっぺ』という投稿をよく見かけて。つまり、ヨーグルッペのファンは、ヨーグルッペを使って何かしら楽しみたいというインサイトがあるんじゃないかと気づいたんです」
電通九州 クリエイティブ・ディレクター 湯治健富
そこから考え出した企画が、「ヨーグルッペトレジャー」。パッケージに登場する女の子が、宮崎を模した「ミザヤキの国」を歩き回る、宝探しオンラインゲームです。
「35年間変わらないパッケージ、謎めいた少女の存在。ゲーム化して面白がれる要素は十分にありました」
↑発売以来ずっと変わらない、ヨーグルッペのパッケージ。微笑する少女、背景の山々、色使いやロゴなど、世界観を感じる要素がすでにある。
もちろん、南日本酪農協同株式会社には、商品キャンペーンのためにオリジナルゲームを作った経験はありません。「会議で難色を示されるんじゃないか」。そう思いきや、意外にもすんなり通ったと言います。
「うちの会社は、内容にもよりますが、新しいチャレンジには寛容なんです。過去のキャンペーンでは、スコールカラーのオリジナルiMacをプレゼントしたり、G-SHOCKも流行るずっと前から景品にしたりしました。今回のゲーム企画も、『是非やってみたい』となり会社に提案したところ、OKが出ました。」
ゲームの内容は以前の記事を見ていただくとして、気になるのはキャンペーンの結果です。リリース当初こそ反応がなく、担当者は青ざめたというものの、その後はSNSやWebメディアで話題になり、YouTuberが実況をし、テレビの取材が入るなど、メディアを跨いだ話題喚起に成功。キャンペーン応募総数は267,732通、関東のコンビニなどでも商品の取扱が始まり、売上も前年比を超えるなど、想定を大幅に上回る結果を生み出しました。成功の要因を、湯治はこう分析します。
「電通PRが発表している、PR IMPAKT®という考え方があります。I=Inverse(逆説)、M=Most(最上級)、P=Public(社会性)など、広がりやすいPR視点のポイントをまとめたものですが、ヨーグルッペ・トレジャーでもこの要素を意図的に盛り込んでいきました。逆説は『乳製品メーカーがゲームを作った』ですし、最上級は『東京ドーム247個分の広大なプレイフィールド』。社会性は『宮崎を舞台にしたこと』などです。ゲームという目新しさだけでなく、広がるポイントを地道に仕込んでいったことが、よかったんじゃないかと思いますね」
二番煎じはコケるが定説!?
「映画でもゲームでも、2作目はコケると言われてますから(笑) 、同じことはしたくない。でも、宮崎の営業担当の谷口と話していく中で、トレジャーⅡもありかなと思い始めて」
谷口
「私は宮崎県全域の営業担当なので、宮崎のいろんな企業と付き合いがあります。もしトレジャーⅡをやるとしたら、何をすれば面白くなるか。そう考えた時に、県内企業に協力を仰いで宮崎全域のプロモーションに繋げられればいいのではと考えました」
電通九州 宮崎支社 谷口優太
最初のキャンペーンの時と同様、電通九州からはゲーム以外にもさまざまな提案がありましたが、結果的には「ヨーグルッペトレジャーⅡ」が採用となりました。
「前回の評判の良さが、決断を後押ししてくれました。でも、ウケたからといって前回と同じでは商談のネタとして弱い。前回を超えるという、あえて困難な挑戦に立ち向かったわけです(笑)」
~ゲームストーリー概要~
宝探しから数年・・・冒険はまだ終わっていなかった。
ある夜、ヨーグ・ルッペの夢の中。
昔生きていた頃と同じ姿で、父が出てきた。
「パパは、まだアライブだ。何者かに呪いで姿をチェンジされたのだ・・・」
そこで目が覚めた。夜はまだ明けていない。はっきりとした夢。
本当に父が生きていたらいいのに。頬は、涙で濡れていた。
ふと気がつくと、枕元にあるシャベルが光り輝いている。
手に取ると、どこからともなく声が聞こえてきた。
「ミザヤキの大地に埋まりし宝石 100 個。さすれば、呪いは解かれん」
再び、シャベルを肩に担ぎ、広大な大地へと駆け出したヨーグ・ルッペ。
しかし、ミザヤキの地には、なにやら不穏な空気が漂っている。
果たして、彼女は宝石を見つけて、父の呪いを解けるのだろうか。
今作の特徴は、広大なフィールドの中にたくさんのミニゲームを仕込んだこと。商品バーコードを入力すると隠し要素が発動したり、さまざまなコラボ要素があったりと、前作の世界観を活用しながらさらにマニアックに楽しめる仕様になっています。
「さまざまなファンやクラスタを意識した作りにしたのが、今回の特徴です。前回からのゲームファンはもちろん、スコールのファンや協賛企業のファンなど、ヨーグルッペだけに頼らない内容にしたことで、多くの人が話題にしやすいようにと考えました」
「私の役割は、宮崎の企業に協賛の交渉をして周ること。企画書を持参して、前回のキャンペーンを例に出しながら説明すると、宮崎が盛り上がるならと快く協賛を申し出ていただきました。ホテルの宿泊券や、東京宮崎間の飛行機往復チケットなど、こちらも驚くような景品も提供いただくことができ、感謝でいっぱいでしたね」
バズで終わらせない、成果に結びつくPR施策
ゲーム企画から、エリアブランディングの領域へ。ヨーグルッペトレジャーはIIとなり、さらに予想もしなかった展開を生んでいきました。
石川さま
「問い合わせで一番多かったのが、『宝の最後の一個が見つからない』というもの。中には、『あの(渡れない)島に絶対あるはず』と言い出す人もいたりして。対応は正直大変でしたが(笑)、それだけゲームを夢中で遊んでくれた証拠だと思います」
商品の値上げ時期とも重なり、不安もあったと言いますが、キャンペーン応募総数は10万通以上。売上も前年をさらに超え、再び成果に結びつきました。一連のキャンペーンを振り返って、谷口はこう言います。
「石川さんと話していつも感じるのは、製品に対する強い愛です。自信を持って、大好きな商品を作り、売っているんだなという当たり前のことに、感じ入ります。担当させていただく中で、自分自身も南日本酪農協同さんの商品に対する愛が芽生えてきて、少しでも貢献しようと思えるようになりました」
「ヨーグルッペはある意味、うちの会社を一番表現してくれている商品かもしれません。だから社内の思い入れも強い。その特徴を最大限に生かして、キャンペーンを主導していただけたのは、さすが電通九州さんだなと感じています」
「まず商品自体が良くて、その先にいるファンも商品を愛している。となれば、そこを裏切るようなことをしてはいけないと思って、商品らしさを大事にすることに気を配りました。キャンペーンが生んだ結果は、みなさんのヨーグルッペへの愛の強さなのではないでしょうか」
キャンペーン企画やPR施策に関するご相談は、こちらからご連絡ください。